四十九日のレシピ

四十九日のレシピを見てきました。
サブタイトルにある、「母の遺言は四十九日の大宴会」とあります。終活名画座としては大変気になるタイトルであり、大宴会?と首を傾げてしまうのですが、なるほど大宴会でした。
物語は、主人公でもある永作博美の義母の突然の他界でしたが、リアルにそのシーンは映されていませんが、むしろそのシーンよりも、残った家族の心の動きに焦点を当てています。主人公は夫とのトラブルの仲で傷つき母に係わってきた人々とのやり取りを通じて、時折幼い日に出会った二度目の母と、自分との関係をより強く意識してゆきます。そしてその愛情の深さを再認識してゆきます。呆然と日々を過ごしていた父と、この娘だけではとても考えることが出来なかった義母の思い、それをなんとも軽妙に周囲の人たちが教えてくれるのです。
そして知らされるごとに、すでに亡くなっている人の大きな愛情に気がつき、故人の遺した希望をかなえるべく四十九日の大宴会を企画してゆくのですが、それこそがまさに二人の家族にとってはグリーフケアであり、再生の道だったのでしょう。
ややもすると、家族葬と考えがちな昨今で、忘れてはならないのが、家族ばかりが一人の死を悲しんでいるのではないということ、そしてそうした人たちとの交流が遺族に新たなスタートを見せてくれるということになるのだということ。
石橋蓮司の表情が滑稽でも有り、またかっこ悪く仕上げているようですが、なかなかスタイルもよくかっこいい親父に仕上がっており、それぞれのキャストが生かされた作品でした。BGMのハワイアンはなぜに?という感じで振り返りますが、それの不思議とマッチした緩やかなエンディングにすっと疲れが抜けるような思いをしました。

四十九日のレシピ

201311月公開 監督タナダユキ 脚本黒澤久子 原作息吹有喜
追伸
主人公音美の終活、家族が取り組む音未の人生年表、そしてグリーフワークと、ご興味のある方にはぜひとも見て、重苦しくない爽やかな感覚を味わってほしい映画でした。