おみおくりの作法

上映館にてトークライブに登壇させていただいた映画でした。

そのとき様子が記事になりましたので、記載します。

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葬祭に関する知識や技能を国から認定されている「葬祭ディレクター」として、また、最近ではよく耳にすることも多くなった<終活>や<エンディングノート>といった“死を迎える前に考えること”に関するセミナーや相談会を行い、いろいろな方からの話を聞く場を作ってこられた尾上さん。まず『おみおくりの作法』を観た感想として、身寄りのない故人を“おみおくり”する民生係の主人公ジョン・メイがどのようなことにこだわり、どのようにそれをカタチ(葬儀)にしていくのか興味を持ったと言う。また彼の心豊かな面があったからこそ、そういった身寄りのない故人の思いも掬い上げることがを出来たのではないかと述べる。

いま日本でも、葬儀では「自分(故人)らしさ」ということが口にされるようになってきており、「お金をかけるだけではなく、時間の流れや故人を偲ぶ言葉などによって、いかにそれを具現化できるかが非常に重要になっていると思います」と尾上さん。そして自分たちの場合は、事前に本人や近親者の話を聞くことができるものの、身寄りもなく遺品のみから故人の思いや時間を汲み取ることができるジョン・メイはすごいと感嘆。

また自身の仕事について、ご遺族や近親者などから可能な限り故人の話を一生懸命聞き、葬儀の進行や司会の際の言葉などを決めるやり取りを大事にし、本当に故人のことを感じなければ作れないようなところまで持っていくようにこだわっていると言う。そんななかでお世話をしているときに故人の写真を見せてもらいながら話をしていると、「この人(故人)を古くから知っていたような感覚が生まれる」、「お葬式がすべて終わって最後に、この人に生前に会いたかったなというような思いを感じたことが、実を言うと結構あります」と述べる。

最後の仕事で故人の関係者たちと接していくうち、ジョン・メイの心には少しづつ変化が表れていく。尾上さんは、その彼の変化が面白かったとも言う。「彼は一人で暮らしていなければもっと楽しい人間だったのかもしれません」「(最後の仕事を迎え、それまではしなかったような)いつもと違うことに挑戦したときに、彼の様子が変わっていく、、、スイッチが入る」「自分が普段しないようなことをしながら、実は近くに住んでいた故人に、興味を持っていった、、、と言うより、もしかしたら自分が彼の立場であったかもしれないということを感じたんじゃないかなと、、、」

故人を思うこと、そして対話していくこと。それは本作の印象的なラストシーンに対する尾上さんらしい感想にも繋がっているようだ。ジョン・メイは身寄りのない故人たちの葬儀が無事に執り行われると、故人の写真 (それは思い出の写真だったり、身分証明書だったりさまざまなものだが)を自宅に持ち帰り、その一枚一枚を丁寧に一冊のアルバムに収めていた。シーンとしては彼が写真を整理し、ただその写真を見つめているだけだったが、尾上さんは「アルバムを見ながらいろいろ会話していましたよね」と言う。たしかに、本作では儀式的なおみおくりの方法だけでなく、写真が持つチカラや役割のようなものも大袈裟ではないが描いているようにも思える。尾上さんは「(仕事の中で)写真を見ると勝手に想像ができるという言い方をしてしまうと語弊があるのですけど、いろいろなことを想うことができる」と言い、「こういう終わり方もあるんだとちょっとびっくりした」と言いながらも、ラストシーンでの結末を「最後にジョン・メイが望んでいたシーンが描かれたのかなと思います」と締めくくった。

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